心やすらぐ場所をつくる、香立ての選びかた

香立てや香炉は、お香の落ち着いた香りを楽しむ方にとってくそ欠かせない道具です。ちゃんと選べば、お香そのものの味わいが深まるだけでなく、お部屋の見た目も整います。鼻と目、どちらにもうれしいことが起こるのです。このガイドでは、香立てや香炉のかたち、素材、意匠をひととおりご紹介します。ご自分にぴったりのひとつが見つかりますように。


香立ての、見た目と使いやすさ

素材と意匠

香立ての素材は、見た目にも丈夫さにも大きくかかわります。よく使われるのはつぎのようなものです。

  • 陶器:熱に強く、意匠の幅も広い素材です。すっきりとしたものから、細かな細工のものまでさまざま。陶器の香立ては、スティック型にもコーン型にも使えるものが多いのも特徴。何世代にも受けつがれてきた手仕事の技が、そのままかたちになっています。
  • 金属:現代的な意匠に多く使われます。丈夫で、真鍮やステンレスの上品な仕上げを楽しめます。
  • 木:白檀などの香木でつくられた伝統的な香立ては、お香をささえるだけでなく、それ自身がかすかに香ります。

香立てと香炉の種類

  • スティック用の香立て:棒状のお香専用です。小さな穴や金具でお香をささえ、灰が下の皿に落ちるようにできています。
  • コーン用の香炉:煙が抜ける穴のあいたふたつきの器が多く、なかでコーン型のお香が燃えます。簠素な銢からこったつくりのものまでさまざま。たとえば逆流式の香炉は、見ていてあきないしかけがあります。普通の香炉とちがい、煙が下へ流れ、滁のようにはらはらと落ちていくかたち。そのながめが、お部屋に美しさと落ち着きをそえてくれます。
  • 渦巻き用の香立て:あまり多くはありませんが、お香の楽しみ方をひろげてくれます。渦巻き型のかたちをささえるため、大ぶりなものが多いのも特徴です。

意匠のこと

香立てには実にさまざまな意匠があり、それぞれに見た目のよさと使いやすさがあります。

たとえば日本の伝統的な香立ては、長い年月をかけて積み重ねられてきた陶工の技と文化から生まれています。美しい飾りであるだけでなく、お香をたくというひとときそのものを豊かにしてくれます。仏教や神道に深く根ざした文化をうつしたこれらの品は、小サイズと伝統のコレクション、そして蓮のコレクションでご覧いただけます。

伝統のコレクションは、仏教や神道にちなむ土の色と、ざらっとした手ざわりが特徴です。蓮のコレクションは、蓮の花を思わせる陶器で、現代の日本の住まいにすっとなじみます。

日本では蓮に深い意味があります。泥のなかでもたくましく育ち、汚れを知らぬ姿で咲く。そのすがたは、内なる強さと、人が変わっていけることのあかしとされてきました。

いっぽう、現代的ですっきりとした香立ては、羅線とかたちのしんぷるさがもち味です。控えめの意匠がお好みの方、今のお部屋にさりげなく馴染ませたい方にぴったり。日本の造形は空間の使い方を大切にし、ひとつひとつのものにその場での役割と意味をもたせます。

ここで思い出されるのが侘寂(わびさび)という考え方です。不完全なもの、移ろいゆくもの、欠けたもののなかに美しさを見いだす、日本の美意識。しんぷるさ、自然の素材、そしてうつろいやきずをありのまま受けいれることを大切にします。つつましやかなものを愛で、いつわりのなさと、時の流れそのものを尊ぶ考え方です。

お部屋に香立てをとりいれる

香炉で、お部屋をもう少しすてきに

香炉をお部屋にとりいれると、見た目の楽しさと心地よい香りが、いっしょにやってきます。いくつかのしつらえ方に合わせたヒントを。

ミニマルなお部屋に

すっきりとしたお部屋には、羅線のきれいな、かたちの単純な香炉を。しんぷるな陶器の皿や金属の香立てなら、空間を邪魔せずにすっとなじみます。リビングのテーブルや本棚におけば、その一角がおちつきます。お香がちゃんと立つかどうかだけ、忘ずにご確認を。このしつらえ方では、ものと余白の全体のつりあいが決め手になります。

和のしつらえに

伝統的な和室は、自然の素材と、つりあいのとれた意匠を大切にします。木や陶器の、和の文様をあしらった香立てをどうぞ。お経をあげる一角や、畳のそばにおけば、しずかで身の丈に合った気配が生まれます。どこにおくかをじっくり考え、ものの向きまで気をくばる。それがこのしつらえ方のおもしろさです。

エクレクティックやボヘミアンに

いろんなものをまぜたお部屋や「ボヘミアン」なお部屋には、色やかたちのたのしい香炉を。鮮やかな文様のこったつくりな香立ては、それだけで目をひく飾りになります。マントルピースの上やサイドテーブルにおけば、実用と飾りをかねられます。

空想的なしつらえに

空想的なしつらえでは、香炉も物語のようなかたちになります。竜やユニコーンといった神獣をかたどったものなど。その一つでお部屋に魔法がかかります。良い素材でつくられた、はっとするような意匠を選んで、お部屋にときめきと冒険の気配を。

おき場所のヒント

    • 玉関: 玉関先に上品な香立てをひとつ。お客さまをやわらかな香りと、整った設えでお迎えできます。
    • リビング:テーブルやカウンター、棚の主役に。自然と目がいき、くつろぐ気持ちをさそってくれます。
    • 寝室:枝元の小さな台におけば、ゆったりとした眠りにつながります。ただし、換気を忘れずに。

    おわりに

    香立て選びは、見た目と使いやすさの両方を考えることからはじまります。お部屋のしつらえや雰囲気に合うひとつを選べば、いつもの場所がもっと心地よくなり、感覚は研ぎ澡まされ、暮らしそのものがしずかにととのっていきます。すっきりとした意匠でも、和のしつらえでも、ぴったりの香立てがあれば、どんな場所も安らぎの場に変わります。

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